ひとくちに脱毛症といっても、様々な種類のものがあります。
こちらのページでは、AGA(男性型脱毛症)、円形脱毛症、脂漏性脱毛症等について説明します。
AGA(男性型脱毛症)
数多くある脱毛症の中でも、多くの男性がAGA(男性型脱毛症)に悩まされていると言われています。
だんだんと額が後退し頭頂部が薄くなるなどの症状が特徴で、早い人で20代前半から始まるようです。
AGAの原因として、男性ホルモン(テストステロン)が大きく関係していると考えられ、そのほかにも遺伝やストレス、食事、生活習慣、加齢なども関わっているとされています。
AGAの進行はゆっくりとしたものなので、その変化には気づきにくいですが、次のような症状が見られたときは、AGAが始まっているかもしれないと思って注意する必要があります。
1.髪の毛が細くなると同時に、軟らかくコシがなくなり髪全体のボリュームがなくなってくる。
2.分け目のところが広がり地肌が目立つようになる。
3.一日の抜け毛が200本以上になる。目安としては洗髪後の浴室の排水口が毎日毛で詰まるようになる。
4.朝起きたときに枕にたくさんの抜け毛が目立つようになる。そして、抜け毛がどれも細い。
5.額の生え際が以前に比べて広がっているように感じる。
6.髪型がセットしにくくなり、入浴後などは髪がぺちゃんこになりやすく地肌が目立つようになる。
びまん性脱毛症
びまん性脱毛症は、髪の毛全体が薄くなり、少しずつ進行するのでなかなか気づきにくいという特徴があります。
AGAの女性版ということで、女性男性型脱毛症(FAGA)と呼ばれます。
女性ホルモンは年齢とともに少しずつ減少し、閉経を迎えるころには急激にホルモンバランスが乱れてきます。
いわゆる更年期障害が発症するのもこのころです。
AGAの原因となる男性ホルモンが優位になるので脱毛も起こりやすくなります。
さらに頭皮の潤いを保っていたコラーゲンや皮脂も減少するため、頭皮が乾燥して脱毛につながると考えられています。
ほかにも、ダイエットや生活習慣の乱れ、過度のヘアケア、ストレスなども脱毛に関係していると言われ、これらの原因さえ解消できれば症状が改善されやすいのが特徴です。
円形脱毛症
円形脱毛症は、円形ないし楕円形にハゲている部分(脱毛斑)が突然できる脱毛症です。
「十円ハゲ」と呼ばれるように、一般的には十円玉くらいの大きさと思われていますが、頭部全体に広がるものから、眉毛、体毛などに生じるものまで多種多様で個人差があります。
円形脱毛症は、何の兆候もなく症状が始まります。
気が付いたらハゲていたという人が多いです。
脱毛斑とそうでない部分の境界がはっきりとし、脱毛斑のところには毛穴が残っているのが特徴で、これはやがて髪の毛が生えてくることを意味しています。
また、脱毛斑の周囲の髪の毛を軽く引っ張っただけで簡単に抜けることがあります。
これは、脱毛斑がやがて周りに広がる可能性があることを示唆しています。
円形脱毛症は、かつては自律神経の失調のために起こる精神的ストレスが原因だと考えられていましたが、近年では「自己免疫疾患」によって引き起こされると考えられています。
自己免疫疾患とは、外部からの侵入物を攻撃することで私たちの体を守っている免疫系機能に異常が生じ、自分の体の一部分を異物とみなして攻撃してしまう病気です。
円形脱毛症は、攻撃をつかさどるTリンパ球が毛根を異物ととらえて攻撃してしまうために発症すると考えられ、その攻撃によって毛根が傷んで、健康な髪の毛でさえ突然抜け落ちてしまいます。
しかし、なぜそのような異常が生じてしまうのかについては、まだはっきりとした原因は解明されていません。
円形脱毛症には大きく分けて、単発型、多発型、全頭型の3種類があり、もっとも多くの人に見られるのが単発型です。
これは20歳未満で発症するケースが多いと言われています。
単発の場合では、半年から1年以内に自然に治る確率は80%です。
多発型は、頭皮に2つ以上発生するタイプです。
単発型に比べて脱毛斑が拡大することもあり、症状が改善するのに時間がかかりますが、ほとんどの場合は自然に治癒します。
全頭型は、全部の髪の毛が抜け落ちてしまうタイプです。
円形脱毛症の患者の約1割が全頭型に移行すると言われています。
完全に治癒するのに時間がかかり、副腎皮質ステロイド薬の投与などで治療します。
代謝異常性脱毛症
代謝異常性脱毛症は新しい脱毛症の一つで、ホルモンバランスの乱れや食生活の偏り、無理なダイエットなどの生活習慣が原因と考えられています。
また、タバコやアルコールの過剰摂取、環境ホルモンなども関係するとされています。
代謝異常性脱毛症で抜け落ちた毛髪の毛根部は非常に複雑な形をしていて、ゆがんだり、ぐるぐる巻いていたり、さらに極端に細くなっていたりしているのが特徴で、毛根の成長期に何らかのダメージを受けたのではないかと推測されます。
対策としては、規則正しい生活やバランスのとれた食生活など生活習慣の改善が重要になってきます。
神経性脱毛症
神経性脱毛症も新しい脱毛症の一つで、ストレス過多などの精神的なものが影響して起こり、ストレス性脱毛症とも呼ばれます。
脱毛の部位とそうでない部位の境界線がはっきりしないことが多く、ジグザグな形状をしていることが多いです。
神経性脱毛症は、ひどくなると髪の毛だけではなく、全身の脱毛を招くことがあるので注意しなければなりません。
原因となったストレスや精神的なものを取り除くことで治癒しますが、原因が不明な場合は長引くこともあります。
脂漏性脱毛症
脂漏性脱毛症は、過剰に分泌された皮脂が毛穴をふさいでしまうことにより、細菌やダニなどが繁殖して炎症や化膿を起こして毛髪が抜ける脱毛症です。
皮脂の分泌が活発になる思春期や成長期の男性に起こりやすく、食の欧米化など食事や生活習慣が原因とされますが、男性ホルモンの異常分泌が関係すると言われています。
フケによって毛穴がふたをされた状態になると、毛包内の皮脂が表面に出られず、毛包内を逆流し毛乳頭が皮脂まみれになります。
この皮脂によって血液中の栄養素が孟母細胞に届かず髪の毛が抜けることになります。
また、シャンプーリンスに含まれる添加物であるセタノールやシリコンなどが毛穴の出口に残留または蓄積して毛穴をふさぐと、同じような脱毛症を引き起こすことがあります。
圧迫性脱毛症
圧迫性脱毛症は、帽子やヘルメットなどを長時間かぶることによる圧迫などの外的な要因で起こる脱毛症です。
外部からの髪の毛への過度な負担が原因です。
帽子やヘルメット、カツラの着用が原因で脱毛が進むこともあります。
圧迫する原因となっている帽子やヘルメットなどを取り除いて対処しますが、仕事がら帽子やヘルメットが欠かせないというときは、できるだけ外せるときには外すようにし、髪の毛への負荷をかけないようにします。
また、帽子などをかぶったままだと頭皮が蒸れてしまうことがありますので、通気を良くすることも大切です。
薄毛隠しのために帽子やカツラをかぶっている人も注意しましょう。
牽引性脱毛症
牽引性脱毛症は、男性よりも女性に多くみられる脱毛症です。
髪の毛を長時間きつく束ねたり、縛ったりすることが原因となります。
編み込み型のエクステンション、ポニーテール、ひっつめ髪などのヘアスタイルは要注意です。
さらに、クセ毛や縮毛を伸ばすためのヘアアイロンも髪の毛が強く引っ張られるので、仕様には気を付けるようにしましょう。
牽引性脱毛症の予防には、毎日同じように締め付ける髪型にはしないようにし、分け目も変えるなど、同じところに過度な負荷がかからないようにすることが大切です。
粃糠制脱毛症
粃糠制(ひこうせい)脱毛症は、シャンプーや整髪剤が合わなかったり、すすぎが不十分だったり、整髪料の使いすぎなどが原因で起きます。
その結果、頭にフケが多くなって毛穴の出口をふさぎ、毛母細胞に栄養が届かないため、毛根が緩んで髪の毛が抜けていきます。
ほかにも、ビタミンAやB1、B2の不足、不規則な生活習慣、アレルギー体質などでも起こります。
前頭部から頭頂部にかけて脱毛が始まり、次第に拡大するのが特徴です。
フケが大量に出て脱毛しただけでは粃糠制脱毛症とは言いません。
粃糠制脱毛症はフケがかさぶた状になり、毛穴をふさいでしまうほどの異常が発生する疾病です。
頭皮は赤く、かゆみも伴い、髪の毛は細く乾燥してしまいます。
薬剤性脱毛症
髪の毛は、成長期・退行期・休止期・成長期とヘアサイクルを繰り返して成長していきます。
しかし、それを阻害するのが薬です。
薬には副作用がつきものですが、副作用によって髪の毛が抜けることがあります。
有名なのは、抗がん剤です。
抗がん剤は細胞の分裂を抑制する薬です。
抗がん剤が投与されると、細胞分裂を繰り返して成長している成長期にある髪の毛が大きな影響を受けます。
つまり、抗がん剤によって細胞の分裂が抑制され髪の毛が抜け落ちてしまうのです。
さらに薬剤によっては、休止期の毛髪に影響を与える薬剤もあります。
高血圧の治療などに用いられるα遮断薬やβ遮断薬、Ca拮抗薬、てんかん治療薬、血糖降下薬をはじめ、あらゆる薬剤が毛髪に何らかの影響を与えると言われています。
もし処方された薬を飲んでいて抜け毛が目立つようなら、かかりつけの医師に相談するとよいでしょう。